ニルス・ファンデルプール (Nils van der Poel) 選手は、スウェーデン出身のスピードスケート選手、北京オリンピックの男子5000mと10000mの金メダリストであり、両種目の現世界記録保持者です。
彼が北京オリンピックの10000mで出し世界記録となったタイムは12:30.74、銀メダリストのパトリック・ルスト選手(オランダ)のタイム12:44.59に 13.85秒差 と他の選手たちを圧倒するものでした。
彼が世界のスピードスケート界を驚かせたのは、北京オリンピックでの圧倒的なレースだけではありません。
彼は2021年に入るまで、2014年の世界ジュニア選手権5000mでの優勝を除いて目覚ましい結果がありませんでした。
それが、2021以降は驚異的な伸びを見せます。2022年3月までの間に世界距離別選手権、オリンピック、ワールドカップ、世界オールラウンド選手権で、主に5000m、10000mを中心に圧倒的な強さで優勝しました。
さらに、北京オリンピック後、2021-2022シーズンの終わりに25歳という若さで引退すると同時に、自身がオリンピック直前の3年間に励んだトレーニング内容を記したトレーニングガイド「How to skate a 10k」を無料で公開したのです。
以下がそのトレーニングガイド。指南書(しなんしょ:何かの技術を指導する手引き書)とも言えます。
How to skate a 10k… and also half a 10k by Nils van der Poel.
この指南書に書かれた恐ろしいほどストイックなトレーニング内容と、スケート界の常識に則さないスケートの技術に関する考え方は、一読に値します。
残念ながらこの指南書は英語版しかないので、日本語で読みたい場合は翻訳ソフトなどを併用しなければなりません。
ただ、翻訳ソフトだとやはり細かいニュアンスが伝わりづらい面もあるので、今回私はSIGNEIGHTの選手たちのために、この指南書を和訳して共有したいなと思いました。
和訳した文書を作成し配るためには、文書の著作権が原作者と翻訳者の双方に与えられることとなることから、原作者の許可をとる必要があります。
参考:翻訳物の著作権について知ろう!著作権の所在とトラブル回避
今回ファンデルプール選手に連絡したところ快く翻訳の許可をくださったので、正式に翻訳して選手たちに共有することにしました。
ただいま鋭意翻訳作業中です。
※シグネイトの選手たち・保護者の方々以外への共有は考えていません
また、2023年12月28~30日に行われた冬の強化合宿では、この指南書の要約を100枚弱のスライド資料としてまとめ、講義形式で紹介しました。
これもファンデルプール選手からOKをもらっておこなったものです。
選手たちはファンデルプール選手のストイックなトレーニングやスケート界の常識に反した考え方などに驚いたり感激したりしていました。
選手たちからの感想は英訳し、後でファンデルプール選手に共有する予定です。
私が個人的にファンデルプール選手の指南書を読んですごいなと思ったのは下記の理由からです。
- 取り組むことすべてに理由・根拠がある
- 常識を疑うことを恐れない
- 自分で考え、試し、評価・修正をしている
- これまで前例がない恐ろしいほどきついトレーニングを独自に考えてやり遂げた
- これほどの選手でも、自分の精神的な弱さを認めている
こうした現世界記録保持者の思考・覚悟・哲学などを知ってほしかったので、SIGNEIGHTの選手たちに共有したいなと思いました。
ただし、決してファンデルプール選手が書いたことに理由なしで従ってほしいわけではありません。
ファンデルプール選手の滑り方やトレーニング方法が全スケート選手にとって一律に正しいとは限らないからです。人それぞれに別の正解がありうると思います。
ただ、この指南書で紹介されている内容が何かしら、選手たちの今後のスケート人生、そしてスケート以外の人生の役にたてばいいなと思っています。
トレーニングバイブルを無料で公開してくれていること、そして翻訳とクラブの選手たちへの共有を快く許可してくださったことに関して、ニルス・ファンデルプール選手には本当に感謝しています。ファンデルプール選手、ありがとうございました!