スピード分析をしてみたい

10月28日、29日にYSアリーナにて2023’長根オータムスピードスケート競技会がありました。

SIGNEIGHTからは主に中高生が参加。日頃の練習の成果を発揮し、自己ベストを更新した選手も何人かいました。

大会には加藤条治さんも参加しました。2000年代にスピードスケートをやっていた人なら知らない人はいないであろうレジェンド。競技者としての現役を退いているとはいえ500m、1000mのレースで圧巻の滑りでした。

条治さんの1000mの滑りを2階観客席から観戦していたときのこと。木村コーチがビデオカメラでその滑りを撮影しながら「上からビデオ撮るとスピード分析ができるんだよ。ひろきにお願いしようかな」とボソッと言いました。

木村コーチの独り言だと信じてそのときは無視したのですが、あとになってからスピード分析が何の役にたつのか気になってきました。

スピード分析でわかること

私の理解が正しければ、スピード分析によりできることは「ラップごとの各ストレート・カーブでの平均スピード(例:3周目の第1カーブでの速度など)」の算出などです。こうしたスピードのデータは、特に3000m以上の長距離レースでは Pacing pattern (または Racing pattern) や Pacing strategy と言われて研究されているようです(e.g. Muehlbauer et al., 2010; Takenaka et al., 2011)。

ちなみにこれらの研究から、長距離レースのトップスケーターたちは、序盤のラップが最も速く徐々にラップタイムを落としていく「positive pacing strategy」というペース配分をとることがわかっているらしいです。

また、2008年世界距離別スピードスケート選手権を対象にスピード分析をおこなったTakenaka et al. (2011)によると、1 – 12位の選手たちのグループは13 – 24位のグループに比べ、ストレートでもカーブでもスピードのばらつきが小さかったとのこと。

トップ集団の選手ほど終始スピードが安定している(とある瞬間から急にスピードが落ちるようなことがない)とも言い換えられるかもしれません。

また、スピード分析ではありませんが、ビデオから各ストレート・カーブで何回ストロークしているかという数値も出すことができます。

分析結果の活かし方

ではシグネイトの選手たちのためにこうした分析がどう役立ちそうか・・・

1つは、「毎回カーブで減速している」、「何周目のバックストレートから急激に減速し始めている」など、選手個々人のレーススピードに関する特徴を把握でき、主に弱点を克服するために有用な情報になると考えられます。

また、オリンピック選手等トップ選手の Pacing pattern の情報をネット上で参照できる場合もあるので、トップ選手のスピードやパターンに近づくためにはどうすればいいのか考える材料にもなります。

ということで、そのうちスピード分析をしてみたいと思います。

地代所さん、YSアリーナ2階観客席からビデオ撮影よろしくお願いします!

引用文献:
Muehlbauer, T., Panzer, S., & Schindler, C. (2010). Pacing pattern and speed skating performance in competitive long-distance events. The Journal of Strength & Conditioning Research, 24(1), 114-119. https://doi.org/10.1519/JSC.0b013e3181c6a04a

Takenaka, S., Yuki, M., & Fujii, N. (2011). The analysis of race pacing in elite competitive long-distance speed skating. Biomechanics in Sports 29, Portuguese Journal of Sport Sciences, 11, 393-397

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